おいしい煮つけになりたい

唐瓜直が何やら日記を書いたり、即興創作(140文字×X+α)したり、メモしたり。というブログ。

2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

キノコとタケノコもいつか生えるだろう

君はポケットに残ってしまうような些細な燃えるごみを植え込みに捨てる人だった。僕は両親からそういう教育を受けていなかったので驚いたけれど、「土に返るなら燃やすよりいいんじゃないかしら」という言葉にあっさりと言いくるめられた。なるほど、たしか…

おまえは今まで聞いた物語の話数を覚えているのか?

昔のことだ。僕がまだ子供のころのこと。 流れの百物語一座が来るというので、町内会は盛り上がっていた。もちろん僕の家も。父さんと母さん、それに妹。家族で近所の神社に張られた巨大な赤テントに入ると、隣の佐々木さんとか、久美ちゃん家もすでにきてい…

金沢旅行に出ていた

休暇の取得が秋までずれ込んだけど金沢に旅行に行ってきた。 新幹線が開通したことと、ポスターの写真がよかったこともあり行き先を金沢に決めた。そう、ポスターだ。その存在を今この瞬間まで忘れていた。僕の脳みそはところてん方式で、古いものを覚えてお…

銀杏取りの朝は早い

今日から一週間、町内会で決められた街路樹当番だ。僕はこの当番が好きだった。父や母は仕事で忙しいから、代わりに僕が街路樹になる。樹になっている間はぼんやりしていていいし、学校も休みだ。でもこの時期のイチョウはやだな。この時期は朝からおばあさ…

定形外にもほどがある

「あたし本当は手紙なのよ!」幼馴染の彼女が唐突なことを言うのはいつもの事で、幼かった僕はそれに付き合っていた。「未来にも出せる?」「あたりまえでしょ!」じゃあ、と15年後の僕に届くよう願った。翌日彼女は行方不明になった。もう少しで約束の日。…

目覚める

理想の女性が店先にいると思ったらマネキンだった。女物の洋服を扱う店だったけれど足しげく通った。誰だって自分の好みの店員がいればその店をよく利用するだろう。そうこうしている間に季節が変わってマネキンも変わってしまった。仕方なくマネキン買いし…

アップデートが求められる

超有能なスーパー新入社員がいま、わが社の業績を支えている。高性能AI搭載自立学習型アンドロイド山田君は月給17万円で年中無休働き続けるナイスガイだ。ATOK搭載で関西弁もばっちりである。しかし、彼はいまだにISDN回線しか使えなくて、重たいファイルの…

輝く人

クリーニングに彼女を出す。なんでも洗いますと書いてあったからだ。彼女は薄汚れて駅前のベンチで横になっていたが、磨けば光るとすぐにわかった。一週間後に取りに行けば、彼女は見違えるほどに美しくなっていた。「次からはプレミアムコースがいいですよ…