おいしい煮つけになりたい

唐瓜直が何やら日記を書いたり、即興創作(140文字×X+α)したり、メモしたり。というブログ。

ネズミ算式に増える

 収納を増やそうと買ってきたのはプラスチック製の引き出しだ。四段もあれば足りるだろうと、さっそく一番下の引き出しを開ける。特に取説もない完成品を買ってきたのだが入っているものがあった。折りたたまれた布のようなものだ。一体これは何かと思い出して広げてみると、それは途端に膨らみ始めた。

 人だ。女だ。しわしわではあったが、そう思うまでに時間はかからなかった。裸の女だ。思わず見とれてしまったのは、どうしてだろうか。こんなことが起きるはずがないと、頭が現実を認めることができずにいたからだろうか。それとも徐々にしわが伸びていくにつれて、俺好みの女に膨らんでいったからか。

  女は膨らみ終わると俺の部屋を見渡して「狭いわ」といった。服がほしいと言い出し、それをしまう場所も必要だというのだ。彼女は続けてこうも言った。「四人分、必要だもの」彼女は引き出しを開けていく、そこには同じようにしぼんだ、人間の抜け殻が入っていた。それらは彼女と同じように膨らむのだ。

  そして、俺は家を買った。どうして買ってしまったのかといえば、女たちが入れ代わり立ち代わり俺を誘惑して、家を買いましょうよといったからだ。彼女たちはいま、新居を見て回っている。ここにも置ける、という声が聞こえている。まあ、いいさ。彼女たちと仲良く暮らしていけるのであれば、頑張れる。

  週末、うちに大量の荷物が届いた。女たちが通販で購入したらしい。箱を開ける。簡易包装された収納用品が詰まっている。立ち尽くす俺の前で、様々なサイズの収納用品が開梱され、中から、四度見かけた布のようなものが引っ張り出される。我が家は再び手狭になった。女たちは言う。家を買いましょうよ。