おいしい煮つけになりたい

唐瓜直が何やら日記を書いたり、即興創作(140文字×X+α)したり、メモしたり。というブログ。

輝く人

 クリーニングに彼女を出す。なんでも洗いますと書いてあったからだ。彼女は薄汚れて駅前のベンチで横になっていたが、磨けば光るとすぐにわかった。一週間後に取りに行けば、彼女は見違えるほどに美しくなっていた。「次からはプレミアムコースがいいですよ」その言葉に俺は適当な返事をして店を出た。

 仲良くやっていけるかなと思ったりもしたのだが、美しくなった彼女はそれから一週間もしないうちに新しい男を作って、俺に家賃や食費、それにクリーニング代を置いて出て行ってしまった。週末の半額料金ではなく、プレミアムコースを頼むことができる料金だった。はした金なんて、使ってしまうに限る。

 俺は適当な駅で薄汚れた、まあ普通としか表現できない女を捕まえるとクリーニングに出した。もちろんプレミアムコースだ。女は見違えた姿になって帰ってきた。美しすぎて直視できないのだ。クリーニング屋もお代を返して拝みだすし、俺もひざまずいていた。しばらくの後、顔を上げれば女は消えていた。

 たぶん駅のほうに向かったのだろう。そっちに向かって拝んでいる人たちが道にはあふれていたからだ。俺は背を向けて家に帰った。駅前では数日間にわたって光が満ち溢れ、供え物の山が築かれていたそうだが、女が薄汚れてくるとともに信仰は下火になり、今では誰もあれを拝んだりしない。もちろん俺も。

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